社説 震災30年、未知の危機に備えを
この国は地震が多い。地球上の大地震の2割が日本で起きている。戦後80年間に震度6弱以上の地震は71回あった。その中でも、被害が大きかったのは、1995年の阪神・淡路大震災と、2011年の東日本大震災だった。阪神淡路の死者(行方不明者含む)は6437人、建物の全壊は10万4906棟。東日本の死者は2万人以上、全壊は12万9391棟。いずれも国民の防災意識を一変させる、まさに未曽有の災害だった。
地震には海溝型と活断層型がある。関東大震災や東日本は前者、阪神淡路や能登半島地震は後者だ。海溝型は数十年から数百年の期間で繰り返し起こり活断層型は数千年単位の間隔で発生するという。阪神淡路の発生直前の時点で「(六甲・淡路島断層帯で)今後30年以内に地震が起こる確率」がどの程度だったのか事後的に計算したところ、わずか0.02~8%だった。国内には2千以上の活断層がある。たとえ発生確率が低くても、地震は身近な危険であることを常に認識すべきだろう。
地震の被害は一様ではない。関東大震災では死亡者の約9割が火事による焼死。阪神淡路では約8割が倒壊した建物の下敷きになる圧死。東日本では9割が津波による溺死だった。多様な被害を想定しておく必要がある。
ひとたび地震が起これば、被災地域の金融機関は重い責務を負う。発災直後は営業窓口の早期再開、預金の払い戻し、返済猶予の受け付けといった緊急対応に追われる。その後は住民の生活再建や事業者の活動再開を支えながら、経済復興で中核的な役割を求められる。すべての金融機関が、そうした境遇に突如として立たされる可能性がある。
30年前の今日、阪神・淡路大地震が起きた。南海トラフ地震や首都直下地震は、30年以内の発生確率が70%程度とされる。「1.17」や「3.11」を迎えるたびに当時の教訓に学び、いつか来る危機に備え続けるしかない。2025.1.17
ニッキンのお申し込み
ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。
申込用紙をFAX(03-3262-2838)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。