社説 育児両立の障害を取り払え
産前や産後、女性には身体的にも精神的にも大きな負担がかかる。夫にとっても出産は人生の一大イベント。出産・育児を夫婦でともに担うことのできる環境が整えば、社会全体に大きなプラスとなるだろう。男性の育児休業取得率は、2023年度に初めて3割を超えた。政府は25年度に50%、30年度に85%にする目標を掲げている。現状と目標のギャップはまだ大きい。
育児・介護と仕事の両立を支援するために改正された育児・介護休業法が、4月と10月に段階的に施行される。男性の育休取得状況の公表義務を、これまでの従業員1千人超から、300人超の企業にまで広がる。また、4月から改正次世代育成支援対策推進法も施行され、100人超の企業を対象に、男性育休の数値目標の設定や公表を義務付けられる。金融機関でも、男性育休がより一般的になる契機となるだろう。
3歳未満の子供がいる場合は、テレワークを可能にすることが企業の努力義務となる。さらに、育児と仕事の両立支援の対象は、「3歳未満」の子を持つ社員から、「小学校入学前」の子を育てる社員に広がる。企業は10月以降、(1)始業時刻などの変更(2)テレワーク(月10日以上)(3)保育施設の設置運営など(4)養育両立支援休暇(年10日以上)(5)短時間勤務――のなかから二つ以上の支援策を用意する必要がある。近い将来利用する可能性が高い世代の社員の声も聞いたうえで、社内の支援制度をよりよいものにすべきだ。
5月には男女雇用機会均等法の成立から40年を迎える。だが、いまだ育児を女性に頼るアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)は残る。国は今国会に女性活躍推進法改正案を提出し、26年4月から女性の管理職比率の公表を義務付ける方針だ。性別を理由としてチャンスが狭められるような職場は、人材流出を避けられない。こうした制度の見直しに伴って、自社のあるべき姿を見つめ直してほしい。2025.3.21
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