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社説 5月11日号 官民ファンドを再点検せよ

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 会計検査院が4月に官民ファンドの業務運営状況に関する報告をまとめた。報告書によれば2017年3月末時点で全14ファンドのうち6ファンドで投資損益がマイナスとなっている。民間だけで投融資が難しい案件を扱うことを前提にしており、回収期間が長期化することはやむを得ないが、最終損失を回避できるように適切な管理・運営が求められる。また、農林漁業成長産業化支援機構が出資した四つのサブファンドは投資実績のないまま解散していることも指摘された。現状を再点検し、日本経済の成長につながる投資を実現していくことが重要だ。

 官民ファンドの多くは12年の安倍政権発足後に相次ぎ設立された。17年9月末時点で官民ファンドが支援決定した出資案件は766件、支援決定額は約2兆円、実投資額は約1兆5千億円。官民ファンドの投融資が呼び水となって行われた民間投資額は約3兆5千億円とされ、一定の評価はできよう。

 一方で投資実績にはバラツキもみられ、必要性に疑問符がつくファンドもある。海外交通・都市開発事業支援機構、海外通信・放送・郵便事業支援機構、海外需要開拓支援機構などは事業目的が類似し、重複感がある。成長戦略の名を借りて、各省庁が競って設立したためで、縦割り行政の弊害も見え隠れする。

 産業革新機構を核に経済産業省所管のファンドを中心に整理・統合する案もあるが、非効率性を排除するには、省庁の壁を越えて投資分野を整理していくべきだ。地域振興、海外など、より広く投資分野を設定しファンド数を減らせば、案件を持ち込みやすくなる。ただ、統合で肥大化し、設立趣旨にもある民業補完の立場を逸脱しないように注意は必要だ。

 官民ファンドの資金は、ほとんどを政府出資や政府保証で賄われており、損失は国民資産の毀(き)損(そん)につながる。しかし、リスクを避けて安全な投資を増やせば、民間で難しいリスクをとることにより、民間投資を活発化させ、成長を実現するという設立意義を失う。こうした点を踏まえ、適切なファンド運営のあり方を確立してもらいたい。
2018.5.11


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