ニッキン抄 2022.4.22
英国出身の作家C・W・ニコルさんのあだ名は「赤鬼」だった。北極探検隊に参加し基地を襲ったホッキョクグマを仕留め、エチオピアでは国立公園創設に携わり密猟者と対峙(たいじ)した。空手を学ぶため来日し道場の先輩と登山した際、ブナの原生林の美しさに涙する。「日本のとりこになった瞬間」だった。のちに長野県で私財を投じ「幽霊森」と呼ばれていた荒れ地を購入、生涯かけて再生させた▼相手が誰でも自然を壊す行為には烈火のごとく怒った。林野庁長官に質問状を出し国有林の無計画な伐採を糾弾。手紙3枚で、天然林はもう減らさないとの約束を引き出した▼今日はアースデイ。世界中で10億人が関連イベントに参加する。ニコル氏は2年前に亡くなるまで東京版の実行委員長を20年務めた▼山野で遊ぶ経験は想像力を育む。「日本の森で絶滅した動物がいる。それは人間の子どもだ」。生前の赤鬼の嘆きは、環境ファイナンスに向き合い始めた金融界の課題でもある。2022.4.22
ニッキンのお申し込み
ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。
申込用紙をFAX(03-3237-8124)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。