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社説 信託を社会課題解決の力に

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 1922年の信託法制定から今年で100年の節目を迎える。この間、信託は高度成長を資金面で支えた貸付信託や年金信託、遺言代用信託など多様なスキームが開発され、時代の要請に応えてきた。コロナ禍を経て、その役割・期待は金融分野のデジタル化やESG(環境・社会・ガバナンス)の領域に広がる。信託業務を担う金融機関は社会課題解決に向けて一層、信託の力を生かしてほしい。
 信託財産総額は2021年9月末で1434兆5千億円に増え、最高額の更新を続ける。近年は投資信託への資金流入が大きいほか、高齢化を背景とした財産管理や事業承継などを後押しするサービスも広がりを見せる。多様化する社会・顧客ニーズに応えている表れだろう。
 ここにきて注目されるのがデジタル変革の分野。信託スキームを活用した、法定通貨を裏付けとするステーブルコインが、改正資金決済法で発行が認められる見通しだ。資産を分別管理し、発行体が倒産した場合も資産が保護される仕組みで利用者にとっては安全性が高まる。新たな電子決済手段として期待したい。
 ESG分野では、気候変動対応など社会の持続可能性に配慮した投資商品がより求められている。信託協会は、企業に対し役員報酬にESGの成果指標を反映させることを提言する報告書を公表しており、信託銀行などは機関投資家の立場として企業に取り組みを促すうえでも有効だ。
 一方で、実態を伴わない「名ばかりESG投信」に対する懸念もある。販売する金融機関は最終受益者である顧客のESG投資を適切にサポートできるよう人材教育などを含め対応が急がれる。
 信託のベースは信頼。信託商品の広がりとともに、信託の担い手は「受託者責任の重み」(長島巌・信託協会長)を改めて強く意識すべきだ。2022.4.22


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