「ニッキンONLINE」創刊!
 
HOME > 「ニッキン」最新号から > ニッキン抄 > 社説 SNSの風評リスクに備えを

社説 SNSの風評リスクに備えを

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本が議長国を務めたG7(主要7カ国)財務大臣・中央銀行総裁会議が5月11~13日に新潟市で開かれ、デジタル社会における新しいタイプの金融危機の防止に向けて協調することを確認した。3月に米シリコンバレー銀行(SVB)の経営不安説がSNSで拡散されて、取り付け騒ぎにより、わずか3日間で破綻(はたん)に追い込まれたのは記憶に新しい。SNSの情報伝達スピードは格段に速く、うわさが瞬時に広がる風評リスクは今後常態化するだろう。米銀破綻を対岸の火事とせず、官民双方でリスク管理態勢を洗い直す必要がある。
 SVBの破綻は、主な顧客であるスタートアップ企業の資金繰りが悪化し、多額の預金が引き出されたのが発端だった。同行は、それを補うために保有債券を売却して損失が発生したことを公表。ツイッターなどを通じて経営悪化への懸念が預金者に広がり、取り付け騒ぎに発展した。その2日後には、米シグネチャー銀行が破綻した。SVBの破綻が引き金となり、預金が流出したのが原因だった。両行の破綻は、米国史上2番目と3番目(当時)の規模だった。
 米政府は、本来は預金保険制度で25万ドルが保護上限の預金を全額保護すると発表し、金融危機の回避に動いた。2008年のリーマン・ショックでも取らなかった異例の措置で、銀行ビジネスが急激な預金流出に対していかに、もろいかが改めて浮き彫りになった。
 邦銀の調達構造は小口の個人預金の割合が高く、大口預金者への依存度が高かったSVBとは事情が異なる。ただ、信用不安がSNSで瞬時に拡散されるリスクはいまや各国に共通する。まずは、自行に対する風評を早期に把握できる体制づくりが急務だろう。そのうえで、オンライン取引で一斉に預金が引き出される事態にどう備えるべきか、官民が連携して監督・規制や内部管理体制の改善点を検討していく必要がある。2023.5.19


ニッキンのお申し込み

ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。

申込用紙をFAX(03-3262-2838)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事