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社説、保護と活用の視点が必要だ

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 認知症高齢者の金融資産を不正な利用から、どう保護するかは大きな社会的課題だ。信託銀行が提供する後見制度信託に加えて、不正な預金引き出しを防ぐ後見支援預金を取り扱う金融機関は信用金庫・信用組合を中心に100機関へ迫っている。2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるという推計もあるだけに、金融界はこの流れを加速させてもらいたい。一方で、認知症高齢者の金融資産が資本市場で有効に活用されない懸念も生じる。こうした視点からも金融のあり方を考えていくことが重要だ。
 第一生命経済研究所の試算によれば、認知症患者の金融資産は2017年度末時点で143兆円。95年度末の49兆円から3倍近い伸びとなっている。さらに30年度には215兆円に達し、家計金融資産の1割を占めると見込まれている。
 後見支援預金を取り扱う金融機関は増えているが、地域銀行では静岡中央銀行と十六銀行にとどまる。認知症患者の金融資産は特殊詐欺など犯罪の標的にされる可能性がある。守りに有効な成年後見制度は利便性の低さが指摘される。一定の利便性を確保し、安全性を担保できる後見支援預金は地域銀も検討すべきだ。事前の家族間の話し合いに基づき認知症の有無にかかわらず委託者が財産管理できる家族信託も有効だ。
 ただ、こうした預金や制度があることを知らない人も多い。認知症高齢者を抱える家族だけでなく、将来に備えて広く社会に周知していくことが欠かせない。認知症を発生し、判断能力を喪失すると財産管理上さまざまな不都合が生じることを事前に認識してもらう必要がある。
 記憶があいまいになり、預金や有価証券の所在が不明になれば、世代間の資産移転が難しくなり、有効に利用されない金融資産が積み上がる。金融庁でも「高齢社会における金融サービスのあり方」について議論されているが、官民が協力して超高齢化社会で金融資産をどう生かすか検討が必要だ。一方で、認知症が疑われる顧客に金融商品を売りつけるような行為は厳に慎まなければならない。2018.11.9


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