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社説 独禁法見直しは現実的視点で

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政府の未来投資会議は11月6日、地域銀行の経営統合に関して独占禁止法運用のあり方を見直す議論に着手した。利用者を寡占による不利益から守る独禁法の精神は重い。しかし、現実の地方経済に目を向ければ人口減少で、競争の前に事業継続が困難になり、競争相手と共倒れの恐れも否定できない。画一的な適用を柔軟化し、地域銀行の持続性を高める選択肢を増やしておくことは地域経済のインフラを維持するうえで有効だ。
 未来投資会議で独禁法のあり方が検討されるのは、ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の経営統合を巡り、公取委の審査が2年の長期にわたったことがある。統合で長崎県内の貸出シェアが7割を超すため、債権譲渡が承認の条件になった。現規制のままでは、類似ケースの統合をためらう地域銀がでてくることは容易に想像できる。実現しようと思えば、競争環境の維持のため、取引金融機関変更を強いられる取引先を生むことになりかねない。
 10月に第四北越フィナンシャルグループが発足。今後も県内地域銀同士の統合が浮上する可能性はあるだけに予見性の高いルールが必要だ。長崎のケースは認められたとはいえ、判断基準の見えにくさも残った。
 独禁法の条文を改正するのか、企業結合ガイドラインで地域金融機関を例外扱いにするかは固まっていないが、公取委も見直しには理解を示しており、早めに手当てしてもらいたい。地域金融が機能低下を起こしてしまえば手遅れになる。一方で、統合・合併で高シェア銀行が誕生した場合の弊害は当然、懸念される。競争がなくなり利用者が不利益を被らないようにする措置は必要だ。
 地域銀を取り巻く環境が厳しさを増すなか、経営効率化と経営資源の再配分でサービス強化が見込める同一県内の統合・合併は持続性を高める有力な選択肢となり得る。ただ、独禁法の運用を見直したからといって当局が、統合を強いるようなことがあってはならない。地域銀も自らの存続だけでなく、地域経済の成長に貢献できるかどうかの視点で考えてもらいたい。2018.11.16

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