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社説 不動産業向け融資の再点検を

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 不動産業向け融資の過熱感が高まってきた。日本銀行は4月に公表した金融システムレポートで、不動産融資のヒートマップ(金融活動指標)が1990年末のバブル期以来の「過熱」を示したと警鐘を鳴らした。“不動産”という理由だけで、問題視するのは短絡的過ぎようが、バブルを生みやすい資産であることは世界的にみても間違いない。金融機関は、審査体制だけでなく、過度にリスクをとっていないか、改めて点検する必要があろう。
 過熱の一因は2015年1月の相続税制改正だ。これを機に金融機関や不動産業者の提案が活発化し、土地所有者らの節税を目的とした投資用アパート建設が急増。国内銀行の個人の貸家業向け融資残高は4年間で2兆7千億円増え、18年12月末時点で約23兆6千億円に達した。スルガ銀行の不正融資問題などもあり、新規実行額は減少傾向にあるが、残高は積み上がったままだ。
 日銀が指摘しているように、損失吸収力の限られる個人が負債を増やす結果になっている点は懸念材料の一つだ。人口減を背景に地域や立地によっては今後、賃貸需要が低迷し、返済に影響することが考えられる。個人の延滞が増えれば、90年代のバブル崩壊後と同じように貸し手責任が問われる。
 金融庁は、3月末に公表した投資用不動産向け融資アンケート結果に基づき、融資実行後の収支把握状況などの課題を指摘した。審査時に収益シミュレーションしていても半数は、その後に更新していなかった。事後管理の強化は大きな課題だ。
 市場の変化も注意深くみていく必要がある。不動産評価サービス・タスの2月期賃貸住宅市場調査によれば、一部地域で入居募集期間の急激な拡大やアパート系空室率に悪化の傾向がみられた。また、不動産ファンド向け融資も拡大が続く。オフィス・ホテル需要は堅調だが、長期的にみれば、いずれ潮目が変わる時期が来る。金融機関は、目先の利益に惑わされることなく、個々に異なるリスク耐性を踏まえ、不動産融資のリスク管理を徹底してもらいたい。2019.5.17


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