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社説、経営陣は認識の甘さ改めよ

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 かんぽ生命保険の不適切販売を巡り7月31日、長門正貢日本郵政社長ら郵政グループ3社の社長が記者会見した。3時間近くに及んだ会見では、苦情があることは知っていたとしながら、問題の重要性を最近まで認識できなかったと答えるなど、ちぐはぐさが目立った。苦情に耳を傾け、その芽を摘み取る努力をするのが経営者の大きな責任だ。苦情に対する認識の甘さや、企業統治不全を指摘されても言い逃れはできない。
 当日の会見では、不適切な販売件数が、以前の発表から倍増し、18万3千件まで膨らんだことを明らかにした。募集品質管理の向上には以前から取り組んでおり、苦情は大幅に減っているとも述べたが、対策が不十分だったことは明らかだ。深刻なのは、不適切販売でも顧客の同意書を得ていたケースが多数あることだ。外形的に証拠だけ残せばよしとする風潮があったとすれば、問題は根深い。
 高齢の顧客に明らかに不必要な多数の契約を結ばせるなど、悪質性の高い契約もあったようだ。組織全体にコンプライアンス意識が欠如している。
 問題の原因として、目標設定のあり方や職員の給与体系を挙げた。郵便局で保険販売を担当する職員の給与は、中央値で約25%をインセンティブが占めるとされ、現場を歪(ゆが)んだ勧誘に走らせる一因になった。
 ただ、こうした問題の背景に郵政グループに対し、立場の異なる利害関係者から、さまざまなプレッシャーがあることは見逃せない。政府の復興財源確保や、民営化を進めるためには、一定の収益を確保し株価を維持していく必要がある。それが現実の環境と乖離(かいり)した目標につながった可能性は否定できない。
 現段階では全容が解明されておらず、顧客や株式市場には不信感が残ったままだ。経営陣は続投する意思を表明した以上、全容解明を急ぐと同時に、社員一人一人と向き合い、顧客本位やコンプラの重要性を説いていくしかない。長門社長は「信頼を裏切り、断腸の思いだ」と謝罪したが、郵便局とその職員を信頼してきた顧客の気持ちは、そんな言葉では収まるまい。2019.8.9


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