「ニッキンONLINE」創刊!
 
HOME > 「ニッキン」最新号から > 社説 > 社説 高齢者向けサービス充実を

社説 高齢者向けサービス充実を

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 高齢化社会における金融の重みが増している。多くの金融資産を有する高齢者の資産管理を手助けし、資産寿命を延ばすことは日本経済と社会全体にとって重要な課題だ。対策の一つとして「金融ジェロントロジー(老年学)」への期待は高く、銀行や証券会社など業界が結束して研究を始めた意義は大きい。また金融13団体は認知症バリアフリー社会に向けた官民一体の協議会にも参画。これらの知見は金融界全体で共有し、サービスの充実につなげてほしい。
 日本人の平均寿命(2018年)は女性が87歳、男性が81歳で、いずれも過去最高を更新。懸念されるのが高齢化に伴い資産が枯渇する「長生きリスク」。資産寿命を延ばすため、例えばトンチン年金を含む個人年金保険や損失限定型の投資信託などが有効だ。顧客に合わせた多様なアプローチが求められる。
 資産管理能力も中高年期をピークに低下する。認知能力が低下する前に後見制度支援信託・預金などを高齢顧客に周知することが大事だ。家事代行や見守りサービスなど生活支援を組み合わせることも有用だろう。4月に設立した「日本金融ジェロントロジー協会」には長寿社会を支えるサービス開発に英知を結集してほしい。
 認知症発症後も住み慣れた地域で暮らせる社会を目指す「日本認知症官民協議会」には小売りや交通、医療など生活に関わるあらゆる業界団体とともに金融13団体も加わる。異業種との連携を通じ、高齢者の多様なニーズに対応するための新たな視点も取り込めよう。
 デジタル技術の活用も欠かせない。本人確認に生体認証技術とモバイル決済を使えば、店舗に出向かなくても金融サービスを利用できる。全国銀行協会の高島誠会長は「デジタルに不慣れな顧客にも万全の体制を構築することが重要」と話す。
 ただ、こうした商品・サービスの課題整理や先進事例の収集は個別金融機関では限界があり、業界一丸での対応が必要だ。高齢化社会で誰もが安心してサービスを利用できる「金融包摂」の実現を、敬老の日(9月16日)にあたり考えたい。2019.9.13


ニッキンのお申し込み

ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。

申込用紙をFAX(03-3262-2838)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事