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社説 新ルールで目利き力問われる

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 金融庁は9月10日、検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方を公表し、柔軟な貸倒引当金の計上を認めることを明らかにした。経営理念を反映し、将来のリスクを織り込んだ予防的・保守的引き当てを認める。金融機関にとっては、個々の特性に応じた引き当てが可能になる。一方で従来以上にリスクを見極める目利き力や、融資姿勢に、しっかりと経営理念を反映させていくことが求められる。
 一般貸倒引当金の対象となる正常先・要注意先に対しては、特定地域・産業に関する予測を引き当てに反映できるようになる。例えば、漁業者を継続的に支援している金融機関が、足元の兆候から、損失見込み期間内に合理的に不漁が見込まれると判断すれば、その損失を見込んだ引き当てが可能になる。過去にあった不漁期の貸倒実績率を採用し、予防的に引き当てすることで経営を安定化できる。
 個別貸倒引当金については、経営支援を通じた将来キャッシュフローを勘案した引き当てなどが認められる。破綻懸念先でも将来キャッシュフローが見込める先をグルーピングし、正常運転資金の回収見込みを織り込んだ予想損失率を利用することなどが想定される。
 ただ、こうした引き当ての前提になるのは、一貫した融資の考え方が金融機関全体で徹底されているかだ。そして将来の損失を客観的・合理的に判断できる体制が整備されているかにかかっている。甘い目利きでは、自ら経営を危うくすることもあり得ると認識すべきだ。利益水準が下がる不況期に引当金繰入額を減らしたり、引当金戻入額を増やしたりする恣意(しい)的引き当てなどは論外だ。
 検査マニュアルの存在が、金融機関の自主性を弱め、担保・保証に過度に依存した融資を増やしたことは否めない。マニュアルは12月で廃止される。金融システムの安定と金融仲介機能発揮が両立できるよう金融庁、金融機関、監査人が協力し、引き当ての質を高めていくことが重要だ。とりもなおさず金融機関は自由度が増す分、責任が増すことを覚悟すべきだ。2019.9.2


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