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社説 粉飾決算への警戒高めよ

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 地域銀行の中間決算発表で、融資先の粉飾決算発覚による信用コスト増加を危惧する声が相次いだ。笹島律夫・全国地方銀行協会会長も11月13日の定例会見で言及した。巧妙に仕組まれた粉飾を見抜くのは難しいとはいえ、見過ごせば与信コストの増加を招くだけでなく、自行の信用を傷つけることになる。改めて、取引先に不審な点がないか点検してみる必要があろう。景気動向次第では粉飾の誘因が増えることになる。米中貿易摩擦や消費増税の影響もあり、実体経済は弱含みだけに、警戒度を高めて対応してもらいたい。
 東京商工リサーチの調査によると2019年1~10月に粉飾決算が一因となった倒産は16件発生。前年同期間の8件から倍増した。倒産まで至ってはいないものの、取引先への支払い遅延や、金融機関の借入金返済延滞で粉飾が発覚するケースが急増。粉飾期間が長期にわたる特徴もみられるという。
 端からだますつもりで会社を立ち上げるような悪質なケースを除けば、粉飾に手を染めるきっかけは多くの場合、業況悪化であり、融資を受けられなくなると心配するからだ。金融機関は業況悪化の予兆を見過ごさないことに加え、取引先が自ら打ち明けられる良好な関係を構築しておく必要がある。粉飾前の段階で対応できれば、再建を支援する道もあるが、粉飾発覚後では取引先からの信用を失い、難しい。企業側にも、この点をしっかりと認識したうえで、経営してもらわねばならない。
 問題が大きいのは長期間にわたり、粉飾に気づかないケースだ。19年に粉飾倒産したなかには20を超える金融機関ごとに決算書を作成し、15年間粉飾を続けていた事例があった。
 長期化すれば信用コストが膨らむ恐れがある。長年の取引先でも、決算書の数字をうのみにせず、審査していくことが重要だ。事業性評価のためのヒアリングを重ねていくうち粉飾が分かったケースもある。丁寧な聞き取りは欠かせない。また、新規取引が多くなる地元以外での融資は一層慎重さが必要だ。他金融機関が融資しているからという姿勢では危ない。2019.11.22


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