社説 殻を破り、持続的成長に挑む
課題解決のプラットフォーマー
激動の「平成」から「令和」に移ったが、金融界を取り巻く環境は依然厳しく、閉塞(へいそく)感も漂う。持続的成長への“解”は過去の延長線上にはない。自ら殻を破り、新時代のビジネスモデルを構築できるか。変革力が問われる年となる。
世界経済は不透明感、不確実性が増す。注視すべきは11月の米大統領選。トランプ大統領が再選に向け覇権主義を強めれば、米中貿易摩擦激化や新興国経済の混乱、中東の地政学リスクの高まりが懸念される。1月末に予定される英国のEU(欧州連合)離脱後の欧州経済と金融市場への影響、世界的な景気減速と過剰流動性への警戒感が高まるなかでの米欧中央銀行の金融政策からも目が離せない。
国内では消費増税対策のポイント還元、東京オリンピック・パラリンピック終了後の反動が気がかり。政府は過去最大の当初予算を組み、景気腰折れを防ぐ構えだが、財政健全化との両立は遠のくばかりだ。内外のリスクシナリオ次第で、さらなる金融緩和も俎上(そじょう)にのぼろう。しかし、6年半を超える異次元緩和は金融・証券市場の歪(ゆが)み、金融仲介機能の低下、日本銀行のバランスシート悪化を招いた。日銀には副作用を抑え、今後の混乱なき出口戦略に留意した慎重な政策運営を期待したい。
金融界も難題を抱える。人口減や国内経済低迷にマイナス金利政策の影響が加わり、収益力低下が続く。フィンテック企業参入やデジタライゼーション進展で顧客との距離感も変わってきた。従来型の預貸金ビジネスに頼った経営には未来はない。社会構造変化と顧客ニーズ多様化に適応した新時代の金融サービス業を創ることが急務だ。
金融機関の財産は膨大な顧客基盤と情報を持ち、地域社会や顧客から強い信頼を得ていることだ。オープンAPI(データ連携の接続仕様公開)、異業種との連携も含めて情報利活用を本格化すればビジネス領域と収益機会は広がる。人材紹介、M&A(合併・買収)、販路開拓など取引先企業の課題解決を支援すれば、企業の成長や地域活性化と同時に資金需要創造にもつながる。
足元の課題も金融検査マニュアル廃止への対応、デジタル化によるサービス高度化と業務効率化、店舗・ATM網見直し、長寿社会に対応した資産形成・相続支援、サイバー攻撃対策など山積する。働き方改革で人事制度や処遇の見直しも急務。ただ、最大資産である行職員の意欲と働きがいを高める施策を講じなければ組織は活力を失う。
時代が変わっても、日本経済や地域社会を支える金融機関の役割は不変だ。多角的な提携戦略やグループ会社を有効に使い、さまざまな機能・サービス、情報、ヒトをつなぎ、課題解決のプラットフォーマーに変革することで自らの未来も開ける。2020.1.1
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