社説 指針が問う頭取の改革意識
金融庁は2月7日、今後予定する地域銀行トップとの対話における主要論点(コア・イシュー)案を公表した。経営とガバナンス向上に向け示された八つの論点は、持続可能なビジネスモデルの構築に向け、経営トップに改革を迫る内容だ。低金利環境の継続や人口減少を背景に、地域銀の経営は厳しさを増している。金融庁だけでなく地域銀にも当然、危機感はある。現状を打破するための議論を深め、トップが責任をもって手を打ってもらいたい。
金融庁は地域銀の持続可能性について以前から疑問を投げかけてきた。とりわけ危機意識の差や改革のスピード感に違いがある点を問題視している。
端的に表れているのが3番目の論点「経営者の役割」だ。論点の具体例として「経営課題を先送りすることなく、任期中に取り組むため、どのような時間軸を意識し、どのような対応を行っているか」や「頭取は具体的な経営戦略を練り上げるために、取締役とどのような議論を行っているか」などを示した。いずれもトップに責任ある対応を求める切り口だ。
取締役会の役割発揮にも踏み込む。自行にふさわしい取締役の能力をどう考え、選解任をどう行っているかなどをただす。形骸化が指摘される社外取締役の役割発揮に向けた取り組みに迫る。デジタライゼーションの進展を踏まえた業務プロセスや業務体制、店舗のあり方についても議論する。
目を引くのは人材育成、モチベーション確保が主要論点に据えられたことだ。過度なノルマを課し、不正を誘発した事例があるほか、若手の離職が増えている。地域銀トップは、確固たる信念を持ち、銀行業を支える人づくりに取り組むことが求められる。
今回示された論点は、地域銀行版のコーポレート・ガバナンスコード(統治指針)という位置づけだが、足元で地域銀が抱える課題が網羅されている。地域銀トップは、金融庁向けの対応に終始することなく、地域や株主、行員などステークホルダーから支持される改革を実行していかねばならない。2020.2.21
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