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社説 脱炭素にチャンスとリスク

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 菅義偉(よしひで)首相が、2050年までに日本の温暖化ガス排出量を実質ゼロにするを打ち出した。金融界にはチャンスとリスクがある。目標実現には、巨額の資金が必要となり、新たな資金需要が生まれる。一方で、排出量の多い産業への投融資は、投資家から厳しい目が向けられる。その結果、貸出資産の価値が大きく棄損(きそん)する座礁資産化の恐れがある。
 菅首相は所信表明で、温暖化対策は「大きな成長につながるという発想の転換が必要」とした。東北大学の明日香壽川教授は、50年までの脱炭素実現には、電力の再生エネルギー化を中心に官民で約350兆円の関連投資が必要と試算する。一方、約500兆円の経済効果と、毎年数百万人規模の雇用拡大効果を生むという。地域経済活性化の視点でも取り組む価値は大きい。
 金融界には、脱炭素化技術開発への投融資も期待される。環境省や経済産業省が役割発揮を促しているが、世界に先駆け技術開発が進めば、日本の成長力を取り戻す有力な材料になる。
 座礁資産化は、国際決済銀行が1月にまとめた「グリーン・スワン~気候変動時代の中央銀行の役割と金融の安定」で強く警告された。石炭依存度が高い企業などへの投融資資金の投げ売りをきっかけに、金融危機へ発展する可能性もある。温暖化規制は世界各国で強化されており、投融資先の規制対応には細心の注意を払う必要がある。
 単純に資金を引き揚げるだけでなく、融資先企業の変革を促す取り組みも求められる。温暖化ガス排出量の多い鉄鋼業やエネルギー関連産業では、“低炭素化”に進むのが現実的な選択となる。
 中小企業への働きかけも重要だ。納品先の環境基準を満たせないと取引継続が難しくなる。政府には細かく分かれた補助金をまとめるなど、分かりやすい支援を求めたい。2020.11.13


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