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社説 節目迎えても復興は道半ば

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 東北沿岸部を中心に未曽有の被害をもたらした東日本大震災の発生から、まもなく10年を迎える。政府は10年で復興予算32兆円を投じ、インフラ整備にはほぼめどをつけた。ただ、産業・なりわいの復興は道半ばだ。大きな節目を迎えても、支援の手を緩めることはできない。大震災の記憶を風化させず防災・減災に生かしていくことも大事だ。
 被災地金融機関は地震発生直後から被災者支援に懸命に取り組んだ。再建途上で断念した事業者もおり、忸怩(じくじ)たる思いはあろうが、その努力は誰もが認めるところだ。
 東日本大震災事業者再生支援機構の松崎孝夫社長は、金融機関が債権放棄を伴う支援を表明してくれたことを評価する。一方で、悪い部分を切り離す再生手段が可能な大企業と違い、時間をかけて販路開拓を支援し、売り上げを回復させていくしかない小規模事業者支援の難しさを指摘する。長い過程で当初、やる気のあった経営者の心が折れることもあるだけに、いかに寄り添えるかがカギになる。
 福島県では、原子力発電所事故による農水産物への風評被害が残る。岩手・宮城県を含め漁業・水産加工業は漁獲高減少の影響が深刻だ。足元ではコロナ禍が加わり、再建途上で借り入れを増やさざるを得なくなった企業がある。これまで以上に踏み込んだ本業支援が求められよう。3県で10年間に38万人減った人口の回復も現実的に厳しい。整ったハードを生かし、交流人口を増やす施策が必要だ。
 金融界による支援は、今なお続いており、被災地から感謝の声があがる。被災した金融機関が自らの経験を積極的に発信し、金融界で危機対応のあり方が共有されたことは大きい。今後も自然災害は起きる。教訓を糧に取引先支援を含めて、経済・社会のレジリエンス(柔軟さや強靭(きょうじん)性)を高めていきたい。2021.3.5


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