「ニッキンONLINE」創刊!
 
HOME > 「ニッキン」最新号から > 社説 > 社説 改革緩めず特別付利に挑め

社説 改革緩めず特別付利に挑め

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本銀行が3月に運用を始めた「地域金融強化のための特別当座預金制度」(特別付利制度)にエントリーする地域金融機関が相次いでいる。検討中も含め大半が申請する見通しで、経営効率化の機運を一気に押し上げる効果が期待できる。ただ、金融界はビジネスモデルの転換を迫られており、一過性の時限措置のために将来への投資を犠牲にするのは本末転倒。成長への種まきと経費節減の両立を期待したい。
 特別付利制度は2020~22年度の時限措置。統合要件かOHR(経費率)要件のいずれかを満たせば、日銀当座預金に年0.1%の上乗せ金利が付く。前者は22年度末までに経営統合を機関決定したところが対象のため、申請数は限られよう。大半の金融機関が挑戦するのは後者となる。
 ただ、達成のハードルは低くない。OHRは営業経費を金融機関の本来的な収益力を示す業務粗利益で除した指数で、経営の効率性を示す。改善するには業務粗利益を増やすか、経費を削る必要がある。
 近年のOHR悪化はトップライン(業務粗利益)の低減が主因。21年3月期も上場地域銀・グループの6割が減収となった。金融界はこれまでも経費削減を進めてきたが、それ以上にマイナス金利政策下での収益減が大きく影響している。この構図の変更は容易ではなく、要件達成には一段の経費圧縮が避けられない。
 一方で、金融機関は成長分野のコンサルティング業務や資産運用相談業務などに人的資源を集中。デジタル化による業務改革も同時並行で進めている。経費削減を優先させて、人材育成やシステム投資を抑制する結果となれば、日銀が掲げる経営基盤強化という政策意図から逆行する。特別付利のチャンスを追求しつつも、各金融機関は自らが描く改革の青写真を曇らせてはならない。2021.5.21


ニッキンのお申し込み

ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。

申込用紙をFAX(03-3262-2838)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事