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社説 好決算を次の一手に生かせ

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 2025年3月期の銀行決算は好調ぶりが目立った。3メガバンクグループ合計の純利益は約3兆9千億円となり、2年連続で過去最高益を更新した。地域銀行グループも4割が過去最高益を記録した。米国の関税政策の動向など不確実性は大きいものの、26年3月期も好調が続くと見込まれている。株主以外のステークホルダーへの還元や、さらなる収益力向上に向けた投資など、好決算を、どう次の手に生かしていくのかが注目される。
 今回、利益を押し上げた大きな要因は「金利ある世界」が戻ってきたことだ。日本銀行は24年3月にマイナス金利を解除した後、24年8月と25年1月に利上げし、政策金利は0.5%まで上昇。市場金利に連動する貸出に続き、短期プライムレート適用先でも貸出金利が上がり、預貸金利ざやが改善した。約8年間続いたマイナス金利政策期間中に店舗の統廃合など効率化や経費削減を進めてきたことも下支えになった。
 一方で、債券利回りの上昇(価格は低下)により、債券の含み損は拡大しており、有価証券ポートフォリオの再構築は引き続き課題だ。米関税政策の国内事業者への影響は見通しにくく、予防的引き当てを考える必要もあろう。
 好決算を受け、増配や自己株式買い入れ発表も相次いだ。株主還元にとどまらず、顧客向けサービス改善や、さらなる業務効率化に向けた投資も積極的に検討し、収益力の向上を目指すべきだ。重要なステークホルダーである従業員(人材)への投資は欠かせない。賃金で還元するだけでなく、リカレント教育などを含めた人的資本投資を増やし、生産性を高めていきたい。
 好調だったとはいえ、ほとんどの銀行は、プライム市場上場企業に期待される株価純資産倍率(PBR)1倍以上を達成できていない。好決算に安堵(あんど)することなく、企業価値を高める改革のスピードを上げる必要がある。2025.5.23


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