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社説 金融行政の優先順位を明確に

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 金融庁は8月31日、2021事務年度(21年7月~22年6月)の金融行政方針を公表した。この1年、何を目指して金融行政に取り組むかを対外的に示すもので、コロナ禍の下では二度目の策定となる。
 前回はコロナの影響で売り上げが急減していた事業者への資金繰り支援が喫緊の課題だった。今回は、ポストコロナまで見据えた経済再生の取り組みを前面に押し出したのが最大の特徴だ。
 なかでも地域経済活性化に向けた施策では、金融庁・財務局が本来的な管轄の域を超えて、関係機関に働きかけていく覚悟をにじませた。売り上げの回復状況は業種によって差が生じており、今後は個々の実情に応じた事業再生や事業転換、経営改善のきめ細かい支援が求められる。
 そうした状況を踏まえ、同庁が監督権限を持つ地域金融機関に加え、他省庁の所管する信用保証協会のほか商工団体、地方公共団体なども巻き込んで、都道府県別に事業者支援のネットワークを構築するプロジェクトを打ち出したことは評価できる。先が見通せないコロナ禍は未曽有の難局であり、省庁間の縦割りが危機対応の妨げとならぬよう緊密な連携を強く望む。
 金融機関に対する検査については、従来の立ち入り検査に加え、リモート手法も柔軟に組み合わせて対話を深めるという。引き続き事業者への資金繰り支援を促す一方で、将来的な貸し倒れの増加など潜在的なリスクも精査する構えだ。各金融機関は、人手やコストを要する事業者支援を継続しつつ、低収益環境のなかで与信費用の増加にも備える“両面作戦”を強いられることになる。
 当局は金融機関の経営資源が限られている現実を直視したうえで、総花的な要請の乱発に陥らぬよう、金融行政の運用に当たっては政策の優先順位の明確化も欠かせない。2021.9.10


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