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社説 70年ぶり市場改革実現に期待

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 東京証券取引所は現物株の取引時間について、現在は15時までの終了時刻を15時半まで30分間延ばす方向で最終調整している。国際競争力を高める観点からは必ずしも十分な改革案とはいえないが、過去三度も断念してきた取引時間延長の“悲願”達成への道が開けつつある。
 東証は5月に作業部会を設け、9月3日までに4回の会合を開いた。証券会社や機関投資家、ITシステムベンダーら利害関係者と議論しており、10月にも結論を出す。過去に2000年、10年、14年にも取引時間延長を提起したが、いずれも証券業界などの反対を覆せず見送られてきた。
 課題の一つは、対面営業の証券会社で労働時間や事務作業が増えコスト負担となること。もう一つは、投資信託に組み込まれた株式の終値確定が後ずれし、基準価額の算出に遅れが生じる懸念があること。こうした問題点は今回も指摘されており、議論開始当初は「簡単には収束しない」(東証)との見方が強かった。
 一転、30分間延長での決着が現実味を帯びてきたのは、20年10月のシステム障害で東証全銘柄が終日売買停止に陥った反省が大きい。そもそも今回の議論は、再び障害が起きても投資家の取引機会を確保するための施策として検討が始まった経緯がある。再発防止策が、図らずも長年の懸案解消の追い風となった。
 取引終了が14時から15時に変更されたのは1954年。15時半への延長が実現すればおよそ70年ぶりとなる。ただ、海外の主要市場との差は依然大きい。東証の取引時間は現在5時間だが、ロンドン、フランクフルトは8時間半、シンガポールは7時間、ニューヨークは6時間半。アジアの金融ハブを目指すには、海外との時間差を縮め、国内外の投資家ニーズに寄り添う改革が欠かせない。その第一歩となる結論を期待したい。2021.9.17


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