社説 海外発リスクへの耐性強めよ
世界経済の不安定化リスクが高まっている。米国の量的緩和縮小(テーパリング)に伴う金利上昇で新興国から資金が流出し、実体経済に悪影響を及ぼす可能性があるためだ。中国不動産大手・恒大集団の債務危機問題も予断を許さない。国内金融機関は不確実性を増す海外情勢に備え、リスク管理の継続的な向上に努める必要がある。
米連邦準備理事会(FRB)は11月にもテーパリング開始を表明する構え。懸念されるのが米利上げで資金流出やドル建て債務の返済負担増に直面する新興国各国の景気回復ペースの鈍化だ。国内経済も輸出の減少を通じ、下押し圧力がかかってくる。
日本銀行が米長期金利の1%上昇を想定した金融機関向けストレステストでは、信用コスト率は2023年度までに1%程度上昇すると試算。有価証券損失も加わり、財務を圧迫する。自己資本比率は規制基準を維持する見通しだが、新興国ではワクチン普及の遅れなどもあり、さらなるダウンサイド・シナリオもありうる。各金融機関はアジア向け投融資を含め一段のリスク管理強化が急がれる。
中国恒大集団の経営危機も火種としてくすぶる。恒大集団は年末にかけて複数の社債利払い期限を迎える。仮にデフォルトすれば「理財商品」を購入した投資家の間で信用不安が広がるほか、中国の不動産市況悪化を通じた世界経済への悪影響も無視できない。
国際金融市場で大幅かつ急速な調整が起きた際、金融機関の有価証券ポートフォリオが影響を受けやすくなっている点にも留意したい。日銀によると、海外投資ファンドが持つ金融資産との重複度はリーマン・ショック期前よりも高まっている。低金利環境で高利回りの海外資産が増えたためだが、そうしたリスク特性の変化も踏まえた投資計画や管理態勢が求められる。2021.10.29
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