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社説 好決算に潜むリスクに備えを

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 上場する地域銀行・グループの2021年4~9月期決算が11月15日に出そろった。与信関連費用の減少や手数料収入の増加などが寄与し、約9割が前年同期比で増益となった。表面上は予想を上回る好決算となったが、今後、融資先企業の倒産や債務者区分のランクダウンが増えてくれば一変するリスクをはらむ。実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資による中小企業の過剰債務問題をソフトランディング(軟着陸)させることが当面の課題となろう。
 4~9月期の企業倒産件数は50年ぶりの低水準となった。国や金融機関による手厚い資金繰り支援が下支えしている格好だ。それに伴って融資の焦げ付きに備えて積み立てる与信コストは予想に反し、地域銀全体で前年同期より約4割も減少。これが追い風となり、決算発表前に業績予想の上方修正が相次いだ。
 20年4~9月期にコロナ禍で営業活動を自粛せざるを得なかった投資信託販売や法人向けコンサルティング業務の手数料収入が、今期は増加。さらに、マーケット環境の改善など、好材料が重なった。
 今後の課題は、景気回復局面を見据えた経営支援に移る。「リベンジ消費」で、足元の個人消費は回復基調が鮮明だ。売り上げの減少に苦しんできた小売業者にとっては、在庫を増やすか様子見かの判断を迫られる段階に入る。政府は「Go To トラベル」の再開を検討しており、観光産業も転機を迎える。
 そうした事業者が手元資金で増加運転資金をまかなえるのか、追加の資金調達が必要なのか。年明け以降とも言われるコロナ感染の「第6波」に備えながらの、きめ細かい目配りが求められる。過剰債務を抱えた企業の与信管理と、新たな資金需要への対応をどう両立させるか。追い風がやむ前に、本格的な支援態勢を整える必要がある。2021.11.19


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