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社説 新市場選択を持続成長の糧に

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 東京証券取引所が2022年4月に行う市場再編に伴い、現在東証一部に上場する地域銀行の9割超が最上位の「プライム」市場を選択した。移行後は厳しい上場基準が適用され、企業価値向上の圧力は格段に増す。看板の掛け替えにとどめず、経営力を高める契機としたい。一方、あえて「スタンダード」市場を選んだ銀行は経営資源をより地域に振り向け事業モデルを磨いてほしい。いずれも持続的な成長に生かす視点が重要だ。
 多くの優良企業が上場するプライム市場ではブランドや信用力の確保が期待できる。これまで通り、採用や従業員のモチベーション維持につながるメリットも大きい。地域銀のなかには流通株式の時価総額や平均売買代金が基準に満たないものの、経過措置期間を勘案して複数行がプライムを選択した。
 ただ、上場維持には高いハードルが待ち受ける。「海外の機関投資家と建設的に対話できる企業」と位置づけられ、それに見合う株式の流動性や収益力、さらには気候変動関連の情報開示など質の高いコーポレートガバナンス(企業統治)が問われる。投資家に評価される持続可能な成長戦略が欠かせない。
 現状は多くの地域銀で株価純資産倍率(PBR)が0.2倍台に低迷し、市場からの評価は厳しい。超低金利や人口減、競争激化の環境下でどう成長シナリオを示すか。業務範囲規制の緩和はその足がかりともなる。投資家からの企業価値向上圧力を事業モデル変革につなげてほしい。
 スタンダード市場を選択した銀行にあっても、地域活性化への貢献を通じて企業価値を高める方策が一段と求められよう。プライム上場に費やすコストを地域のために振り向けることで安定成長を目指してもらいたい。経営陣は市場再編を好機と捉え、中長期ビジョンを描く時だ。2021.12.10


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