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社説 金融リテラシー向上を国策に

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 個人の金融リテラシー向上が進んでいない実態が、金融広報中央委員会の調べで分かった。18歳以上を対象に行ったお金の知識・判断力調査で、正誤問題の正答率が55.7%と前回(19年)より0.9ポイント下回った。政府は貯蓄から資産形成を促す「資産所得倍増プラン」を掲げるが、具現化には国民の正しい金融知識が不可欠。若年・現役世代向けに国策レベルで金融教育を推進する必要がある。
 今回の調査では、家計管理や金融知識など全8分野で正答率が下がった。年齢層別では20~50代の低下が目立つ。実際の投資行動では、株式などの商品性を理解しない購入者の割合も上昇。高利回りをうたった金融商品を巡るトラブルを避けるためにも、金融教育の浸透が急がれる。
 4月からは高校の新指導要領に「資産形成」が盛り込まれた。授業で金融が扱われるのは大きな前進だが、課題もある。大学受験などの試験科目でない副教科の家庭科で行われるため、学校間で教える時間などに濃淡があることだ。教師の知識不足も指摘される。金融界も出前授業などを積極化しているが、マンパワーには限界がある。文部科学省には金融を主教科に盛り込むといった拡充策を望む。
 現役社会人がお金を学ぶ機会も増やしたい。例えば企業が従業員に対し、職場つみたてNISAなど「資産形成制度の利用と金融教育をセットで進めることが効果的」(大和総研)。職場という身近な場で情報を得れば、資産形成を実践しやすい。政府には制度周知に加え、導入にかかる助成など検討してほしい。
 英国では、金融経済教育を「国家戦略」と位置づけ、全世代の国民が生涯を通じて金融や年金に関する正しい判断に必要な情報にアクセスできることを保証しているという。今後はこうした海外の先進事例も参考にしたい。2022.7.22


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