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社説 モラルなき保証利用の戒め

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 信用保証制度は、資金調達力の弱い中小・零細企業を補完するため、公的機関である信用保証協会が保証人となって金融機関から融資を受けやすくする仕組みだ。信用保証協会が負うリスクは国が保険を通じてカバーしており、保険収支が悪化すれば公金が投入される。利用にあたっては常に襟を正す必要がある。
 愛知県の中日信用金庫は7月12日、信用保証の一種の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の申請手続きに不正があったと発表した。保証承諾を得るために、当該企業の売り上げを低く報告した事例が内部調査で発覚した。
 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は未曽有の危機であり、国がゼロゼロ融資を打ち出さなければ企業倒産が続出した可能性が極めて高い。当初は政府系金融機関に窓口が限られていたが、申請が殺到して対応が追いつかず民間金融機関にも開放。地域金融機関を中心にマンパワーを総動員して企業訪問を重ね、迅速に運転資金を行き渡らせた功績は大きい。
 だが、今回の不祥事は金融界の信用に傷をつけかねない。徹底的な調査を通じて不正の原因を究明し全容を公表することが、当事者の最低限の責務だろう。そのうえで再発防止策を講じて、組織内の自浄作用を高めるべきだ。
 信用保証には2007年度から責任共有制度が導入され、金融機関も融資額の20%のリスクを負うようになった。以前の100%保証と比べ、無責任な融資を防ぐのが目的だ。ただ、経済危機や大規模自然災害の際には全額保証が適用される。ゼロゼロ融資もその一つだった。
 金融機関がリスクを一切負わない全額保証は、与信判断や債権管理にあたって各金融機関のモラルが試される。今回の不祥事を対岸の火事とせず、信用保証の本来の意義を再考する契機としてほしい。2022.7.29


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