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社説 人も企業も成長する経営を

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 賃金をコストではなく人的資本への分配と捉え、研修にも資金を投じて従業員の能力を引き出しながら、中長期的に企業価値を高める「人的資本経営」が注目されている。欧米では企業に人的資本に関する情報開示を求める動きが強まっており、岸田政権も追随する姿勢をみせている。他産業以上に人材の質が競争力を左右する金融機関にあっては、単に開示項目を追加するだけの事務的対応に終始することなく、自社の人材戦略を再考する契機としてほしい。
 金融機関が組成・販売する“プロダクト”はモノづくり企業よりも差別化が難しい。そのため、人材の質こそ同業他社との競争力の差となる。だが、「失われた30年」と呼ばれる経済低迷期を経て、人への投資を抑制してでも目先の利益確保を優先せざるを得ない経営環境が続いてきた。
 2010~14年のデータ(厚生労働省調べ)では、日本企業の人的投資(OJTを除く研修費用)は対GDP比で0.1%。米国(2.1%)やフランス(1.8%)など他の先進国と比べ見劣りする。人件費や教育訓練費は、財務会計上は費用として処理されるため、短期的には利益を押し下げる。しかし人的資本は知的財産やビジネスモデルと同様に無形資産であり、近年は無形資産こそが競争力の源泉であるとの認識が企業や投資家の間で広がっている。
 人的資本の情報開示を通じて企業間の差を可視化できれば、人材育成にたけた企業に資本市場からの成長マネーが集まるようにもなるだろう。ただ小手先の対応は禁物だ。単に非財務情報を可視化するだけでは企業価値向上にはつながらない。経営戦略を明確化したうえで、求める人材像を十分に議論し、どう育成・獲得していくかがカギ。まず、ビジョンを描くことが何よりも重要なプロセスとなる。2022.8.26


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