「ニッキンONLINE」創刊!
 
HOME > 「ニッキン」最新号から > 社説 > 社説 新たな「危機の芽」に目凝らせ

社説 新たな「危機の芽」に目凝らせ

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 1997年11月に起きた「平成の金融危機」から四半世紀が過ぎた。三洋証券のコール市場でのデフォルトに続き、北海道拓殖銀行、山一証券、徳陽シティ銀行が相次いで破綻。金融界は未曽有の混乱に陥った。その後、金融システムを守る枠組みが整備され、金融機関は自己資本を充実。ストレス耐性は格段に高まった。だが、いつの時代にも新たな「危機の芽」は潜んでいる。苦い歴史の教訓を今に生かしたい。
 25年前の金融危機を招いた主因の一つは、右肩上がりの土地神話の下でのめり込んだ不動産融資だ。収益優先でボリュームを追求し、リスクを見誤った。多額の不良債権を抱えた後も処理を先送りし、破局に至った。地価に対する過度な期待や情勢判断の甘さが招いた結果である。
 足元でも利回り確保を狙い依存を強めた米国債など外債投資が金利上昇で痛手を負っている。また、地域金融機関で増えた海外投資ファンド向け貸出も国際金融市場で急速な調整が起きた際に打撃を受けかねない。自らの体力を超えたリスクテイクを続ければ健全性を毀損(きそん)することは歴史が証明済みだ。常にリスク特性の点検が欠かせない。
 国内でもダウンサイド・シナリオへの備えが急がれる。東京商工リサーチによると、企業倒産は今年に入り10月まで7カ月連続で前年同月を上回った。コロナ関連融資の返済が始まったところに円安や原材料高が直撃。感染が再拡大すれば、飲食業を中心に倒産が加速する恐れがある。伴走支援を軸とした与信コスト管理の強化が求められる。
 また、23年4月には日本銀行の黒田東彦総裁が任期を終え、金融緩和政策の転換も想定される。だが、市場部門で“金利が動く”状況は久しい。異次元緩和の出口を迎える際に起こりうる金利急騰などを視野に入れた体制整備が重要となる。あらゆる事業リスクを見据えたフォワードルッキングな取り組みを進めたい。2022.11.18


ニッキンのお申し込み

ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。

申込用紙をFAX(03-3262-2838)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事