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社説 NISA拡充は利用者目線で

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 投資信託や株式などの運用益にかかる税金が免除されるNISAが、利用者目線の使いやすい仕組みに近づく。政府は11月28日、新しい資本主義実現会議を開き、岸田首相肝いりの「資産所得倍増プラン」を正式に決定。今は時限措置となっているNISAの恒久化や、非課税期間を無期限にすることを盛り込んだ。これにより、国民が制度の期限や非課税期間の終了を気にせず、安心して投資できる環境がようやく整う。
 英国のISAをお手本に2014年にスタートしたNISAは、国民の7人に1人が専用口座を保有し、一定の普及に成功した。ただ、日本人全般が持つ投資に対する苦手意識を払しょくするには至っておらず、今回の手直しはその契機となる可能性がある。
 NISA恒久化は、制度発足当初から金融庁や証券界の悲願。首相が9月の訪米時にウォール街で明言し、国内調整が一気に進んだ。政治主導の決断をまずは評価したい。
 だが、今後の詰めの作業は注意深く見守る必要がある。制度変更の細部は、12月下旬に取りまとめる23年度「税制改正大綱」の議論の過程で固める運びとなるからだ。与党・財務省には富裕層への金融所得課税強化へ増税をセットで進めようとする動きがあり、金融界は警戒を解かない。
 「金持ち優遇」批判への配慮は政治的に理解できる。ただ「貯蓄から投資」を促すNISA拡充に水を差すのは明らかだ。28日の会議では、渋澤健委員が「(NISAは)平たく言えば(中間層に)『お金持ち』になってもらうための優遇制度」と指摘。国民に資産形成を推奨しながら、その成功の先に増税をちらつかせるのは、政策の相性が悪すぎる。
 金融所得課税の見直しは首相が就任前に言及し、市場の不興を買って見送りを決めた経緯がある。国民の投資行動を大きく変えるためには、最後まで利用者目線の政策決定に徹するべきである。2022.12.2


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