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社説 2022年内部事件の教訓

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 ひと昔前までは、現金の取り扱いが増える年末に強盗犯への警戒を強めるのが銀行界の常識だった。年間発生件数は2001年の229件をピークに減少傾向にあり、近年は20年前の1割程度に激減した。防犯カメラ性能や検挙率の向上に加え、キャッシュレス化の進展も一因のようだ。
 入れ替わるようにサイバー犯罪が増加しており、本部によるシステム対策に加え、不審メールへの注意など全社的な警戒が欠かせなくなった。ただ、金融機関にとって最大の売りである「信用」を維持する観点からみれば、内部事件の抑止こそが最重要な課題だろう。残念ながら、22年は企業イメージを大きく損なう特異な金融不祥事が目立った。
 SMBC日興証券は相場操縦の疑いで同社および副社長ら幹部が東京地検に起訴された。中日信用金庫では実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の不正手続きが発覚した。両社に共通するのは、上層部による業務推進上の重圧が現場の不正を誘発した点だ。
 財務省幹部が酒に酔って電車内で他の乗客を暴行した事件や、三菱UFJ銀行の子会社社員が大学院時代の知人にやけどを負わせた事件も世間の耳目を集めた。
 最も件数が多い着服・横領では長期にわたる多額犯罪や支店長・次席ら営業店幹部による犯行も散見された。ひとたび発生すれば内部調査や当局への報告、対外公表、再発防止策の策定・実施など多大な労力を要する。業務効率化の過程で事務のけん制機能が低下したことや給与面の待遇低下で金銭的問題を抱える従業員が増えたことなどが、発生要因として指摘されている。
 日常、組織的に厳格な監視態勢を敷いておくことは、ふと魔が差した時の行動を抑制する力となる。不祥事の根絶は難しいとしても、他の金融機関で起こった事件を対岸の火事とせず、警鐘を鳴らし続ける努力が必要だろう。今年の事件を教訓として、次年以降の対策に生かしてほしい。2022.12.16


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