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社説 ゼロゼロ出口で真価発揮を

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 2023年は、銀行や信用金庫・信用組合にとって、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を利用した中小企業のリファイナンス支援が最重要課題の一つとなるだろう。政府は1月10日、ゼロゼロ融資の返済猶予期間を事実上延長する「コロナ借換保証」をスタートさせた。単なる延命措置とならないように事業の改善策や将来ビジョンについて話し合う契機にしてほしい。
 コロナ禍に加え、足元ではウクライナ情勢や円安の影響で原油・原材料価格も高止まりしており、企業収益を圧迫している。収益力が回復する前にゼロゼロ融資の返済が始まれば倒産リスクが高まる状況だっただけに、政府が借換保証という救済措置を講じたことは評価に値する。
 政府は、利用条件として事業者が取引金融機関と話し合って「経営行動計画書」を作成するよう求めている。コロナ禍が始まってから既に3年が経過しており、今も業績不振が続く企業が何の対策も講じなければ回復の見込みは薄いだろう。そうした企業との対話や伴走支援に人的資源を割き、地域の雇用を守ることが金融界の優先課題となる。
 ただ将来性のない事業者に対しては廃業支援も一つの選択肢だ。借換保証の保証限度額は、ゼロゼロ融資の6千万円を上回る1億円。既存債務の借り換えだけでなく新たな資金需要にも対応できる。それだけに、経営再建の可能性が乏しい事業者がいたずらに借金を膨らませる懸念もある。取引金融機関には、事業継続が本当に可能かを見極める冷徹な判断力が求められる。
 近年、銀行界は超低金利下でビジネスモデルの転換を図り、コンサルティング業務やM&A(合併・買収)仲介などの新しい分野を育ててきた。ゼロゼロ融資の入り口では膨大な融資を迅速にさばく事務処理能力が求められたが、出口では新分野で培ってきたオーダーメイド型の提案能力が必要となる。今こそ、その真価が問われることになる。2023.1.20


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