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社説 経営者の覚悟が問われる春闘

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 経済団体連合会と日本労働組合総連合会(連合)の労使トップが1月23日に会談し、事実上の2023年春闘が始まった。金融界は3月中旬から労使交渉が本格化する。物価高騰などによる実質賃金の減少を背景に、賃金引き上げ機運はかつてなく高まっている。経営者は自社の持続的成長につなげるためにも、積極的な賃上げや従業員の処遇改善を実現してほしい。
 「各行が中長期的な目線で人的資本への投資を強化することが肝要だ」。全国銀行協会の半沢淳一会長は1月の定例会見で、会員行に対して「人への投資」に強い期待を示した。消費者物価指数が約41年ぶりの上昇率となるなか、従業員の日常生活に意識を傾ける経営者が増えている。
 西武信用金庫や高岡信用金庫などは4月からの5%以上の賃上げを前倒しで決めた。ベースアップを表明する地域銀行も出ている。いずれも経営主導で先行して踏み切る取り組みとして評価したい。
 賃上げは有能な人材確保や従業員のモチベーション向上でも重要だ。日本生産性本部によると、金融業は他業態よりも労働生産性の改善が目立つ。働き方改革による残業削減やデジタル化で効率化が進んでいる表れで、一人当たりの業務密度は確実に高まっている。給与アップでさらに従業員の努力に報いたい。
 ただ、有価証券運用での含み損や与信コスト拡大などで足元の収益環境が厳しい地域金融機関は、今春闘で難しい判断を迫られよう。代わりに、複数年度にわたる賃上げの方向性や、リスキリングを始めとしたキャリア形成支援などで従業員に報いる姿勢を示すのも一手だ。働き手の意欲や働きがいをいかに高めるか。経営者の覚悟が問われる。
 労組側も従業員代表として発言力を高める必要が増す。賃上げ交渉に不慣れな若手執行部員も少なくない。各単組は上部団体とも連携し、交渉ノウハウを共有したうえで労使協議の場に臨んでほしい。2023.1.27


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