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社説 急がれる金利リスク耐性強化

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 米国のスタートアップ企業向け融資大手のシリコンバレーバンク(SVB)が3月10日、経営破綻した。急増した預金を長期の債券で運用していたところに、急速な利上げが直撃。多額の含み損を抱えたことで、信用不安から預金流出を招き破綻に至った。金利上昇がもたらす保有債券の損失は日本の金融機関にも通じる問題だ。今回の破綻を教訓に、金利リスク耐性の強化を急ぐ必要がある。
 SVBは株式で資金調達を拡大したスタートアップの余剰資金を預金として受け入れ、2022年末時点で預金残高は約1750億ドル(約23兆円)まで膨らんだ。その運用先が償還期限の長い住宅ローン担保証券(MBS)や米国債。だが、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げで損失が拡大。長短金利が逆転する「逆イールド」も進み、収益へのマイナス影響が強まった。
 総資産の約6割を長期債に投資する極端な運用ポートフォリオで、金利リスク管理に問題があったのは確かだ。ただ超低金利下、余剰資金を有価証券運用に傾注してきた国内金融機関も内外金利上昇で同じく逆風を受けている。
 特に地域銀行や信用金庫では海外金利上昇による外国債券の含み損問題に加えて、円債の金利リスクも浮上。日本銀行の異次元緩和政策が修正・正常化に向かえば、評価損益の悪化が一段と進む。特に地域銀では地方債の保有残高が20兆円に迫り、債券デュレーションも大手行に対して長期化傾向にある。
 難局に対処するには、含み損を抱える債券売却などの早期対応とともに、運用体制の立て直しが急がれる。例えば、運用方針を単年度から複数年度ベースに切り替えれば、中長期的に収益計画を描ける。また、リスク管理高度化に向けた「リスク・アペタイト・フレームワーク」の活用や、運用人材の育成・確保も欠かせない。経営陣が従来以上に積極関与し、持続的な運用戦略を構築する契機としたい。2023.3.17


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