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社説 観光回復へ人材不足解消急げ

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 観光産業が深刻な人材難に陥っている。新型コロナウイルス禍前から課題だった人手不足に拍車がかかっており、金融機関は人材紹介を軸に支援を急いでほしい。
 コロナ禍で蒸発した観光需要は急回復している。5月の大型連休は主要観光地ににぎわいが戻った。航空大手2社の予約数は2018年のコロナ前に近い9割程度に回復。JR5社の新幹線指定席も同様だった。訪日客も急増している。日本政府観光局によれば3月は20年1月以来の150万人に達した。1年前の27倍超の水準で、23年は年間2千万人に届く可能性がある。
 一方、人手不足を背景に予約を断ざるを得ない宿泊事業者もいる。日本銀行が発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)によれば、宿泊・飲食サービスの雇用人員判断(DI)は「不足」が「過剰」を大幅に上回るマイナス67だった。1年前から60ポイント悪化しており、深刻さを増す兆候もある。観光関連産業の負債比率は高く、需要を取りこぼせばインフラが維持できなくなる恐れがある。
 人手不足解消には人材派遣会社や海外の日本語学校と連携し支える手もある。デジタル技術を活用した生産性向上支援は重要だ。人流データを精緻(せいち)に分析し、施設の効率運営と機会損失の抑制が可能になるだろう。
 中期的には観光地全体をプロデュースする人材が欠かせない。観光庁は3月、ポストコロナ時代の育成ガイドラインをまとめた。関係者を巻き込める経営人材の必要性や求められるスキルを整理した。観光地再生は行政や金融を含めた一体的な連携がカギになるためだ。
 脱コロナが見え始めた23年は観光再始動の年になる。22年に世界経済フォーラムがまとめた観光開発指数で日本は1位になった。追い風を受けた成長をたぐりよせられるよう金融機関には人材確保やデジタル技術を活用した生産性向上の支援を続けてほしい。2023.5.12


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