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社説 迫るマネロン対策期限に対処を

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 犯罪収益を警察当局の追跡の目から遠ざけるマネーロンダリングを防ぐことは、もはや金融機関にとって経営上の最重要課題の一つとなった。対策を怠って犯罪組織やテロ集団を利するようなことがあれば、当局や世論による厳しい糾弾は免れない。
 だが、システム投資の費用や人材が乏しい中小金融機関では、対策が遅れているのが実情だ。金融庁は、6月末に公表した報告書で業態間格差に警鐘を鳴らした。規模の小さい金融機関にとっては重い負担となるが、対策を完了すべき期限が迫っており、残された時間は少ない。
 金融庁は、2021年4月に金融機関に対し、3年以内にリスク管理態勢の整備を終えるよう要請文を出した。「マネロン・テロ資金供与対策ガイドライン」で対応が求められている87項目すべてを網羅する必要がある。本来の期限は24年3月だが、金融庁は最近になって23年12月までに改定作業を終えるよう求め、事実上3カ月の前倒しを示唆した。期限を過ぎてもマネロン対策が不十分な場合は、必要に応じて法令に基づく行政対応さえ行うという。
 金融庁がこれほど躍起になるのは、金融活動作業部会(FATF)から厳しい指摘を受けた苦い経験があるからだ。FATFは、マネロン対策の国際基準を策定する組織だ。同時に、参加国が国際基準を守っているかを互いに監視する「相互審査」の機能も持っている。低い評価を受けて、その後も改善が見られない国は、国際決済網からはじき出されるリスクがある。
 21年8月に公表された第4次対日相互審査の結果は、先進国としては不合格を意味する「重点フォローアップ国」だった。近い将来に実施される第5次審査で、合格に相当する「通常フォローアップ国」に返り咲くのは容易ではない。非競争分野であるマネロン対策では金融機関同士の連携を強化して、不備の穴を一つ一つ塞いでゆくしかない。2023.7.14


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