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社説 専門人材確保へ採用改革を

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 大手行がデジタル分野など専門人材の確保や育成しやすい環境整備を急いでいる。新卒採用で高度知識が必要な業務を担う人材の受け皿となるコースの拡充が相次ぐ。地域銀行でも専門コースを設ける動きが広がり始めた。新卒採用時から有能な人材を確保し、中長期的に育てる仕組みは今後の競争力を左右する。従来のゼネラリスト志向では育ちにくい人材を補完する制度は欠かせない。
 3メガバンクが設ける専門コースは投資銀行業務やデータサイエンス、国内外の市場を相手に資金運用する分野など幅広い。学生時代に磨いた専門性に見合う配属を行い、行内で育てる狙いがある。拡充を急ぐのは商社やコンサルティング会社との競合が激しいためだ。大手行には給与面をてこ入れする動きもある。三菱UFJ信託銀行は2024年度からジョブ型の人事制度を導入し、デジタルなど3領域の専門人材に最大2千万円超の年収を支給する。
 地域銀でも横浜銀行がデジタル人材向けに、入行時から本部の専門部署配属を前提にするコースを用意した。秋田銀行は24年度にDX(デジタルトランスフォーメーション)・IT向けコースを創る。
 従来、専門能力を持つ学生も営業現場での経験を積み、一定期間経過後に本部に異動させる傾向が強かった。デジタル技術を駆使したサービス開発や市場運用などは高い専門性が求められ、ゼネラリストを育てる仕組みだけでは専門人材を確保しにくくなった。有能な人材は他産業を含めた争奪戦で、将来的に役立つ「下積み」でも専門キャリア志向が強い場合、転職を誘発する一因になりかねない。
 一方、営業現場を支える人材と溝ができ、独りよがりのサービス開発や業務変革になれば採用改革は台無しになる。複線型のキャリアパス構築は多様な人材の力を発揮しやすい環境づくりがカギを握っており、マネジメントの力量が問われることになる。2023.10.27


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