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社説 「金利ある世界」に備え先手を

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 2023年4~9月期の銀行決算は、金利上昇に伴う順風と逆風が相半ばした。マイナス金利の解除は時間の問題だろう。「金利のある世界」の復活は中長期的には銀行経営にとって強力な追い風となる。その一方で、短期的には保有債券の値下がりや資金調達コストの上昇を通じて、収益を押し下げる要因にもなり得る。当面はリスク管理に細心の注意が必要だ。
 大手行の収益は急回復した。3メガバンクの連結純利益は前年同期の1.7倍。欧米の金利上昇で、海外向け貸出の利ざやが拡大した。国内マーケットに依存する地域銀行でも、貸出金利回りの低下幅は縮小してきている。金利消滅後の深く、長いトンネルは出口が見えつつある。
 一方、国内債券の含み損は急拡大した。金利が上がれば、銀行が以前から保有する債券の時価は下がる。22年度は海外の金利上昇に伴って、外国債券の価格下落が悩みの種だった。23年度は日本銀行の政策修正で長期金利が上昇し国内債券にも影響が及んだ。経営体力のある銀行は逆ざやの外債や円債の損切りに動いた。いち早く利回りの高い有価証券に再投資すれば収益力を高められる。今後は体力の差が収益格差を生むだろう。
 米国の利上げに伴うドル調達コストの上昇も収益の足を引っ張った。日銀が利上げに踏み切れば、国内の短期金利も上昇に転じる。円預金の調達コスト増加は運用収益の拡大に先行するため、一時的に資金利益が圧迫される。ただ、金利のある世界ではボリュームが収益力に直結するため、沈静化していた預金獲得競争が激化する可能性がある。
 企業倒産件数は増加傾向だが、歴史的な低水準から微増し始めた段階だ。与信コストが少ないうちに、含み損を抱えた債券の処理を急ぐ必要がある。前回の利上げから17年が過ぎ、組織的な経験則は薄れた。環境が一変するパラダイムシフトに備え、先手を打つべき時期を迎えている。2023.12.1


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