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社説 指定金を持続可能な制度に

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 納税者から地方税などの公金を納めてもらう際の振込手数料をめぐり、長年値上げを求めてきた金融機関と、財政難を理由に拒み続けてきた地方公共団体との交渉が転機を迎えている。年内にも47都道府県の大半が値上げに応じる見通し。だが金融機関側の事務コストを充足する水準に達しない事例が多く、次年度の仕切り直しも視野に入れた戦略的な折衝が必要となる。
 銀行は顧客から他行口座への振り込みの依頼を受けた場合、振り込む側の銀行が受け取る側の銀行に手数料を支払う。ただ、公金の振り込みは例外扱いとされ、これまで手数料が課されていなかった。しかし、2024年10月からは一般の振り込みと同額の1件62円の手数料が発生する。
 この62円は金融機関にとって原価にすぎず、そこに事務コストを上乗せして手数料を設定する。一般顧客向けの手数料は金融機関の判断で決定できるが、地方議会の予算承認が必要な地公体向けの手数料改定は個別の交渉を要する。24年度の予算編成をにらみ、12月中には多くの都道府県が結論を出す見通しだ。
 だが、公金の振込手数料は長い間、無料もしくは極めて低い水準に据え置かれてきただけに、金融機関側の要求に満額回答する地公体は少ないようだ。まずは都道府県との交渉を優先する金融機関が多く、市区町村との交渉のヤマ場は今後となる。都道府県との交渉経過を注視する市区町村が多く、その結果が一つの基準となる可能性が高い。
 地公体に代わって金融機関が公金の支払いや収納を請け負う指定金融機関制度の導入から、来年で60年となる。振込手数料の赤字分を、指定金業務以外の地方債引き受けや公金預金の運用によって補えたのは遠い昔の話だ。還暦を迎えた制度を持続可能なものにするためには、不退転の姿勢で交渉に臨む必要がある。金融機関は対等なパートナーとして丁寧かつ直截(ちょくせつ)的な説明に徹するべきだろう。2023.12.15


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