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社説 脱・経営者保証が社会を変える

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 3月15日から、中小企業などが経営者保証なしでも融資を受けられる、新しい信用保証制度の受け付けが始まる。金融機関による脱・経営者保証の動きを加速させる契機となることを期待したい。
 新制度では、通常よりも高い保証料を支払うことで、経営者保証が不要になる。金融機関は長年、中小企業へ融資する際に、経営者個人が会社の連帯保証人となるよう求めてきた。その融資慣行が変わり始めたのは、政府が2022年12月に「経営者保証改革プログラム」を公表し、相次ぎ施策を打ち出してからだ。
 銀行・信用金庫・信用組合の新規融資に占める経営者保証なしの割合は、22年度の34%から、23年度上期は47%に上昇。70%超の銀行は18行になった。23年4月から金融庁が金融機関への指導を強め、個人保証契約をする場合にその必要性や解除条件の説明を義務付けた効果が出ている。
 政府主導の改革であり、民間による自発的な動きでないことは確かだ。だが、中小企業が全企業数の99%を占める日本では、金融機関の行動変容が社会に与えるインパクトは大きい。経営者保証がネックとなり、創業に二の足を踏む、事業承継の後継者がみつからない、失敗を恐れて新事業に挑戦できないといった弊害が指摘されてきた。攻めの姿勢を持つ起業家や事業者が増えることを望む。
 今回の「経営者保証の解除を選択できる信用保証制度の創設」も、改革プログラムに盛り込まれたメニューの一つだ。現状は、信用保証付き融資の7割で経営者保証を徴求している。借り手の一部に不誠実な経営者が存在することは否定できない。そのため、新制度を利用するには、企業側も自社の経営管理体制を強化して、財務内容を正しく開示することが求められる。
 経営者保証なしの融資割合をより高めるには中小企業の意識変化が欠かせない。それを丁寧に伝えていく啓蒙活動が次の課題となる。2024.3.8


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