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社説 カスハラから従業員を守れ

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  顧客が従業員に対し、恫喝(どうかつ)や理不尽な要求などをするカスタマーハラスメントが社会問題になっている。被害者にとっては離職や精神疾患の原因にもなりうる深刻な問題だ。営業現場の従業員を守る対策を急ぐ必要がある。
 カスハラの種類は暴言や脅迫、長時間の居座り、性的な言動、SNSでの誹謗(ひぼう)中傷など多岐にわたる。繰り返し訪問する、個人的な攻撃をするなどの非常に悪質な事例もあり、逃げ場のない窓口担当者らの精神的負担は極めて大きい。厚生労働省は昨年9月、精神障害の労災認定基準にカスハラを追加し、2023年度は52件が認定された。
 厚労省が1月に実施した企業向け調査では、10.8%の従業員が過去3年以内にカスハラを経験していた。金融・保険業は14.6%、郵便局や農協などの複合サービス事業は15.5%と全業種平均を上回り、金融関係者の被害の深刻さが浮き彫りになった。
 同調査で、カスハラの予防・解決の取り組みを何もしていない企業の割合は35.5%にのぼった。まずは、カスハラ行為を受けた際の行動基準や、カスハラ被害に遭った従業員をどうケアするかを検討し、社内で認識を共有することが第一歩となろう。
 そのうえで、カスハラにどう対処するかという基本方針を対外的に公表することも検討すべきだ。金融界での実施は三井住友銀行や日本郵政、山陰合同銀行、大分銀行、鶴岡信用金庫など一部にとどまる。ホームページなどで自社の姿勢を明示することで抑止力が働き、従業員が加害者に対して毅然(きぜん)とした対応を取りやすくなる利点もある。
 業界を挙げた周知活動も始まった。全国銀行協会は6~7月、独自に作成したカスハラ防止のポスターを会員行に配布した。営業現場では正当なクレームとカスハラの線引きに迷うケースが多い。業界横断で議論し目安を示すことができれば、各金融機関に対策を促す効果があるだろう。2024.7.26


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