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社説 金利競争に陥らない預金戦略を

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  9月2日から多くの地域銀行が普通預金と定期預金の金利を引き上げる。日本銀行による7月末の追加利上げを受け、大手行の金利改定に追随する形で波及した。一方で貸出金利の引き上げ交渉は難航が予想される。今後も預金金利の上昇が続けば、経営体力が消耗する先も出てこよう。金利競争に陥らずに預金を獲得する戦略が急がれる。
 普通預金金利は地域銀のほぼ全行が年0.02%から5倍の年0.1%に引き上げる。2006~07年に日銀が利上げした際よりも政策金利への「追随率」は高い。メガバンクが先行して0.1%を打ち出したことで防衛面から足並みをそろえたと見られる。
 「金利ある世界」が復活し、収益改善の原資となる預金の重要性は増している。金利の引き上げは預金の増強や流出防止に有効だろう。だが、こうして確保した預金は他行でより好条件の金利が提示されれば、そちらに流れる懸念がある。加えて異業種の銀行参入やネットバンキングの浸透で以前より預金が逃げやすくなっている。
 今後、日銀のさらなる追加利上げに合わせて預金金利を横並びで上げ続ける一方、競合などで貸出金利の引き上げが遅れれば、資金利益が縮小する可能性はある。そうした消耗戦は回避すべきだ。
 そのためにも金利の変動に左右されにくい、粘着性の高い預金取引を個人・法人ともに強める必要がある。金利で「集める」のでなく、付加価値の高いサービスなどで選ばれ継続的に「集まる」預金戦略に力を入れたい。
 個人取引では給与振込や年金受給口座といった基盤を強化することが一層重要となり、職域営業などで地道に獲得する。また、つみたてNISA(少額投資非課税制度)など資産形成商品と預金の組み合わせや、多機能のモバイルアプリによる接点強化も預金増強につながろう。対面とデジタルの両面で預金の獲得に知恵を絞ってほしい。2024.8.30


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