社説 米大統領選後も警戒解けず
米大統領選は共和党候補のトランプ前大統領が地滑り的に大勝して返り咲きを果たした。米国の政策金利や基軸通貨である米ドルの変動は世界に大きな影響を与える。日本では短期的に株高・円安を好感する向きもあるが、中長期的には市場リスクや地政学リスクが高まる可能性があり、金融機関経営への影響を注意深く見極める必要がある。
同時に行われた米連邦議会選でも共和党が上院を制し、下院も勝利が確定すれば、赤をシンボルカラーとする共和党が「トリプルレッド」を達成する。米国では議会に予算編成権や米連邦準備制度理事会(FRB)議長らの人事承認権があるため、財政政策や金融政策への影響力が増す。
トランプ氏勝利を受け、減税に伴う財政悪化懸念から米国債のベンチマークである10年物利回りは急上昇した。その影響で日本でも債券が売られ、長期金利が上昇した。トランプ氏はFRBの金融政策運営について「大統領は少なくとも発言権を持つべきだ」と主張しており、FRBは緩和策の転換を迫られる可能性がある。
大統領選後、米ドルも急騰した。日米金利差が縮まらず円安基調が続けば日本のインフレ圧力が高まり、日本銀行の追加利上げの時期にも影響を及ぼす。日米の市場金利には不透明感が漂っており、今後の動向は金融機関の本業収益を大きく左右する。
トランプ氏の公約である大幅な関税引き上げも懸念材料だ。輸入品に一律10~20%、中国には60%の関税をかけると発言しており、日本の輸出産業にも逆風となる。保護主義的な通商政策は米国の消費も悪化させるため、景気減速懸念が高まる。そのため、「トランプトレード」による米国の株高はいずれ反転するリスクがあり、日本株への波及も含め注意が必要だろう。
今年最大の政治イベントを通過したが今後の金融市場は予断を許さない。リスク管理の警戒を解いてはならない。2024.11.15
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