社説 新興育成へ一段の規制緩和を
政府の「スタートアップ育成5か年計画」が11月で丸2年経過した。2027年度にスタートアップへの年間投資額を10兆円規模に増やす目標を掲げ、民間のファイナンス支援に前向きな変化が起きているのは確かだ。しかし、目標実現には遠い。企業成長を支えるリスクマネー供給の拡充・円滑化に向けて、さらなる規制緩和が必要だ。政府は銀行界が求める要望に柔軟に対応してほしい。
スタートアップの資金調達額は22年の約9800億円をピークに23年は約8千億円に減少。24年上半期も約3300億円で前年と同水準で推移する(スピーダ スタートアップ情報リサーチ調べ)。
背景には新規株式公開(IPO)が低迷し、投資家の選別が強まったことがある。ただ、企業の成長段階に応じた政府の支援策が打ち出されたことで、創業間もない「シード」「アーリー」期でも大型投資が出始めるなど好転の兆しは見られる。ユニークなアイデアや技術を持った新興企業が多く生まれ育つ循環を力強いものにするため、官民で成長支援を加速すべきだ。
とりわけ重要なのがリスクマネー供給環境の整備。主要プレーヤーを担う銀行の規制改革を一段と進める必要がある。投資専門子会社によるスタートアップへの出資規制は段階的に緩和されてきたが、まだ不十分だ。都銀懇話会は24年度の規制緩和要望で投資子会社の機能拡充に関する新規項目を多く盛り込んだ。
例えば新規上場したスタートップへの追加出資や、東京証券取引所グロース市場上場先への新規出資を可能とする要望は上場後の伴走支援につながる。全国地方銀行協会は出資先に対するビジネスマッチングや人材紹介など関与方法の柔軟化を求めた。事業成長を後押しする非金融サービス拡大が期待できる。
政府はスタートアップのエコシステムが形成されつつある機運に弾みをつけるべく、要望を検討すべきだ。2024.12.6
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