社説 事業環境の潮流変わった1年
インフレ基調や金利の復活など、経済・金融環境が新たな潮流を迎えた2024年。本紙の読者が選んだ「金融界10大ニュース」にも、そんな世相が色濃く出た。
デフレ脱却への期待を象徴したのが「日経平均株価、34年ぶり最高値更新」(2位)。堅調な企業収益や米国株の上昇を背景に2月、バブル期超えの3万9千円台に上昇。3月には初の4万円台に乗せた。日本銀行は同月、賃金と物価の好循環の強まりを確認し「マイナス金利を解除」(3位)。7月に追加利上げを決め、各金融機関は17年半ぶりに「短期プライムレート引き上げ」(7位)に踏み切った。
インフレの傾向が強まり始めたタイミングと相まった1月の「新NISA(少額投資非課税制度)開始」(4位)は、多くの人を投資に向かわせた。一方で日経平均は8月初旬に「過去最大の4451円下落」(9位)など乱高下。金融機関は投信顧客のフォローに追われた。2025年は広く投資を根づかせられるか正念場となる。
「20年ぶり新紙幣発行」(1位)も大きな関心を呼んだ。1万円札の肖像画に渋沢栄一が採用されたほか、預金金利の上昇局面と重なり、約60兆円とされるタンス預金の預け入れ動向も注目された。
災害への備えを再確認する一年でもあった。元日には最大震度7の「能登半島地震」(6位)が発生。南海トラフや首都直下型の地震も想定され、BCP(事業継続計画)の不断の見直しが欠かせない。また「米大統領にトランプ氏が返り咲き」(5位)や「与党、15年ぶり過半数割れ」(8位)によって内外の不透明な政局に警戒が必要だ。
信用を損なう不祥事も相次ぎ、上位に「金融庁出向中の裁判官と東証社員にインサイダー疑い」(16位)、「損保4社がカルテルで課徴金20億円超」(20位)が入った。各金融機関は対岸の火事とせず、不正を防止できる体制構築に努めてもらいたい。2024.12.20
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