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社説 横並び脱し持続可能性を高めよ

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 2025年の幕が開いた。世界経済には不透明な要素が多い。米国では自国優先のトランプ政権がスタートする。中東紛争、ロシア・ウクライナ戦争は終わりが見えない。中国は不動産不況が長引いている。日本経済も石破茂首相が掲げる「賃上げと投資が牽引(けんいん)する成長型経済の実現」へ課題は多い。
 金融機関は、リスクへの警戒を緩めず、それぞれの立場から取引先や経済・社会の課題解決に取り組む姿勢が求められる。同時に人口減少で社会が縮むなか、自らの持続可能性をどう高めていくかが問われる。
 24年3月、日本銀行がマイナス金利政策を解除し、7月に追加利上げを決めた。利上げは25年も予想され金融界を取り巻く環境は大きく変わる。一般的に「金利ある世界」になれば、金融機関の収益にはプラスだ。ただ、すべての金融機関の持続可能性が高まることが保証されるものではない。
 競争上引き上げざるを得ない預金金利と、一定の交渉を要する貸出金利引き上げにはタイムラグが生じる。それが大きくなると収益を圧迫する。超低金利下では下火だった預金獲得競争も25年はさらに激しくなることが予想され、ALM(資産・負債の総合管理)の徹底などが求められる。
 人手不足も気がかりだ。24年12月の日銀短観によると銀行の雇用人員判断(過剰‐不足)はマイナス29。協同組織金融機関はマイナス50となり、1年前に比べ銀行は8ポイント、協働組織は11ポイント悪化した。人手不足は深刻化しており、デジタル化を進めつつ、どこに人手をかけるのかを明確にすべきだ。
 その際、横並びを脱却し、顧客に選ばれる道筋を探ることを意識してもらいたい。同じ品質の商品・サービスならば、利用者は価格(金利)で選ぶ。価格によらず顧客の支持が得られる得意分野を磨く道もあろう。資産形成支援、中小零細企業融資、地域の困りごと解決など、何か確かな強みを持つことは持続可能性の向上につながる。戻ってきた「金利ある世界」を超低金利下で続いた低利貸出競争から抜け出す好機にしたい。
 人口減少を前提にすれば、将来を拡大という意味の成長だけで語るのは難しい。「拡大」「維持」「縮小」する分野に分けて考えていくことが現実的だ。ダウンサイジングも排除することなく将来ビジョンを描いてもらいたい。
 15年の国際連合総会において全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の前文には、「この計画は、人間と地球、そして繁栄のための行動計画」とある。自社、地域、日本の「繁栄」に向けた金融機関それぞれの行動計画が期待される。2025.1.1


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