社説 障がい者が定着する職場環境を
企業に義務付けられる障がい者の法定雇用率達成に金融界が苦慮している。2024年は未達先が6割を超えた。法対応へ積極的な採用が急がれるが、数合わせで雇用すれば早期離職につながりかねない。誰もが同等に生活できる「ノーマライゼーション」に対する社内の理解を深めるなど、受け入れ体制をしっかりと整えることが大事だ。 厚生労働省が集計した24年の障がい者雇用状況によると、金融・保険業の実雇用率は2.36%と過去最高だった。一方、法定雇用率(24年度は2.5%)に対する未達割合は65.4%と、全産業の54%と比べても高い状況だ。 法定雇用率は26年7月に2.7%へ上がり、その後も段階的な上昇が見込まれる。未達企業には納付金の支払い義務が生じるほか、改善が進まない場合は企業名が公表されるペナルティーを負う。取引先や地域へのイメージダウンにもつながるだけに、経営者は重要な経営課題と捉え、対応を急いでほしい。 ただ留意すべきは、社内の理解や準備が十分に進まないまま、雇用ありきで採用しないことだ。政府機関の調査では、就職しても1年後に約4割の障がい者が退職している。仕事内容のミスマッチや人間関係の悪化が理由に挙げられる。雇用後の定着率を高める取り組みが必要になる。 まずは障がい者雇用の意義や目的を社内に伝え、職場で一緒に働くことへの理解を組織全体で深めることが欠かせない。大手行の障がい者雇用に特化した特例子会社では、定期的に銀行営業店との座談会など交流を通じて相互理解の促進に力を入れている。 業務範囲を決めるうえでは障がい特性や適正・能力の把握はもちろん、何よりも本人が「この仕事をしたい」と思えているかを定期的にヒアリングすることが大切だ。雇用がゴールではない。障がい者が安心して長く就労できる職場環境作りに金融界全体で取り組んでもらいたい。2025.2.21
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