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社説 脱炭素の進路を見直す機会に

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 三井住友フィナンシャルグループは3月4日、脱炭素を目指す国際的な枠組みである「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」から脱退した。邦銀では初だが、米国の金融機関を中心に脱退が相次いでいる。今後、他の国内金融機関にも同様の動きが広がる可能性がある。
 米国の政権交代が、国際的な脱炭素の機運に影を落としている。米国では、二大政党の気候変動対応のスタンスがほぼ真逆だ。共和党は化石燃料を主要産業とする中央部や南部の州を支持基盤としている。トランプ大統領は就任初日、「パリ協定」からの再離脱を命じた。バイデン前政権下で温暖化対策を進めた民主党との落差はあまりに大きい。
 NZBAの保険版「ネットゼロ・インシュアランス・アライアンス(NZIA)」からは、2年前に日本の3メガ損保が脱退した。やはり米国での政治的圧力が原因だった。共和党地盤の23州の司法長官が連名で、顧客に温暖化ガス排出量の削減を求める保険会社の動きが独占禁止法に抵触する可能性があると指摘し、瓦解(がかい)状態に追い込まれた。
 ビジネス社会は政治の影響から逃れられない。今後も米国で政権交代が起こる度に逆方向への揺り戻しが繰り返される懸念がある。脱炭素に積極的な欧州の動きも見極めながら、日本はいずれに追随するかの二者択一ではなく、独自の戦略を再定義したうえで国際協調に臨む必要がある。
 日本の二酸化炭素排出量は中国、米国、インド、ロシアに次いで世界で5番目に多い。大手銀行は国内のほぼ全産業と利害関係があり、主要行が手を組めば国内で脱炭素の取り組みを加速させられる。政府と連携し金融界が脱炭素の取り組みで足並みをそろえる際の競争政策上の問題や、温暖化対策でコストが膨らむ事業会社の国際競争力などについて、課題を整理することも必要だ。米国の余波で国際社会が揺れる今こそ自国の進路を見直す好機にしてほしい。2025.3.14


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