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3月23日号 限度額の撤廃は時期尚早だ

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郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が、ゆうちょ銀行の通常貯金限度額撤廃を軸に意見聴取を進めている。地方の利用者から撤廃を求める声があるのは事実だが、ゆうちょ銀の経営への影響や民営化の進捗(しんちょく)状況を考えれば撤廃は時期尚早と言わざるを得ない。徐々に進んできた民間金融機関との連携にも水を差す。金融界を含め幅広い声を聞き、慎重に政府への意見をまとめるべきだ。2016年4月の限度額引き上げの影響が小さかったことに重きを置いて判断するのは拙速に過ぎる。
 民営化委や総務省は、16年の限度額引き上げ後のゆうちょ銀の貯金伸び率が他業態を下回っていることをもって、金融界が危惧した資金シフトは起きていないという認識だ。ただ、細かく地域別にみれば影響度は異なる。資金シフトがあったという地域金融機関は少なからずあり、検証が十分とは言い難い。この間の推移はマイナス金利という特異な状況下で起きたものであり、鵜呑みにはできない。
 郵政グループ内に意見の食い違いがみられることも注意すべきだ。3月15日の民営化委で日本郵政の長門正貢社長は限度額撤廃を要望したとされる。しかし、ゆうちょ銀の幹部からは、マイナス金利で、資金運用が容易ではない状況下での貯金増加を歓迎しない声も漏れる。経営を不安定化させる要因になりかねない。当事者が望まない撤廃を急ぐ必要があるのか疑問だ。
 民間金融界が反発を強めるのはもっともだろう。これまで限度額は段階的に拡大されてきたが、撤廃となれば事情が大きく違ってくる。影響を正確に予測することは難しく、全国地方銀行協会が主張するように、企業の決済預金などもシフトし、民間金融機関の預金が減少する事態もあり得る。極端なシフトが起きれば、金融システム全体に悪影響を及ぼす。また、ゆうちょ銀との対立が深まり、これまで進めてきた連携が頓挫すれば、ゆうちょ銀が目指すビジネスモデル実現が遠のく。
 限度額の判断を下すのは政府だが、民営化委の意見は極めて重い。公正・中立な立場で意見をまとめてもらいたい。2018.3.23

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