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社説 サウンドバンキング忘れるな

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 世界的な金融危機に発展したリーマン・ブラザーズの破綻から9月で10年を迎える。“100年に一度”とも言われたが、1990年代後半に国内発の金融危機を起こした日本にとっては、10年余りの間に二度目の危機となった。7月1日、ニッキンが提唱する「銀行の日」を迎えるにあたり、改めて危機の教訓を思い出してもらいたい。
 リーマン危機の発端は米国の住宅バブル崩壊だ。ただ、過去の例と異なり、住宅ローン債権などを複雑に組み合わせた証券化商品を通じ、リスクが増幅され、広く世界に伝(でん)播(ぱ)した。
 国内金融機関は証券化商品の直接的損失こそ少なかったものの、株式市場の下落で保有株式に多額の評価損が発生。自己資本が目減りし、思わぬ経路で金融仲介機能不全に陥りかけた。欧米の銀行に比べ邦銀の中核的自己資本に占める株式保有残高比率は依然として高く、株式市場の影響を受けにくい経営体質の構築は引き続き課題だ。
 危機を引き起こす資産バブルは往々にして発生する。そしてユーフォリア(熱狂的陶酔)を伴い、過度なリスクテイクを誘発する。リーマン危機当時、金融庁総務企画局長として対応に追われた全国信用協同組合連合会の内藤純一理事長は、危機を防ぐには金融庁も金融機関もマクロ経済の動向を視野に入れ「リスクテイクが許容範囲を超えていないか常時モニタリングしていくことが重要」と説く。
 この10年で金融監督・規制は大幅に拡充されたが、形を変えて危機は起こり得る。リスクの芽を見分ける能力向上とリスク耐性強化の手を緩めることはできない。環境は変わっても、銀行はその高い公共性ゆえ、常に「サウンドバンキング(健全・堅実経営)」が求められる。
 今年で28回目を迎える「銀行の日」は1893年(明治26年)7月1日の銀行条例施行にちなみ、ニッキンが1991年1月1日号社説で「より開かれ、より親しまれ、より信頼される銀行」を目指そうと呼びかけたことに始まる。93年からは「地球にやさしく 顧客に親切」をスローガンに「銀行の日」キャンペーンを展開している。2018.6.29


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