社説 従業員目線で働き方改革探れ
長時間労働の是正などを柱とする働き方改革関連法が6月29日に成立した。業務の生産性を高めるための対応が各金融機関に求められるが、効率化ありきでなく従業員の目線に立った“最適解”を探ることが重要だ。長引く低金利やフィンテックの台頭などで従来型の金融ビジネスが限界に近づくなか、働き方改革を新たな事業モデル構築のきっかけにしてほしい。
長時間労働の削減と過労死防止を目的に残業時間の上限規制が法令で定められ、違反には罰則も設けられた。残業削減を追求するあまり、現場にしわ寄せがくる事態は避けないといけない。また、勤務間インターバル制度の導入も前向きに考えてほしい。労働基準局が行った2017年調査によると、金融業は「割増賃金」未払いの割合が3年ぶりに悪化した。残業時間を確認する大前提となる労働時間管理の徹底も不可欠だ。
高収入の金融ディーラーなどを対象にした「高度プロフェッショナル制度」は労働時間の規制対象から外れ、成果で賃金が決まる。「逆に残業時間が増える」懸念も強く、運用面の工夫とセットで適用を検討すべきだ。
働き方改革関連法は多様な働き方を選択できる社会の実現が目的。メガバンク首脳は「育児や介護など、時間に制約のある人たちが働きやすい制度を作ることが本来の趣旨」と強調する。
生活や業務状況に応じたフレックスタイム制やテレワーク(在宅勤務)の導入などは増えてきたが、法成立を機に働き方の選択肢をもっと広げてほしい。
収益構造の変化に直面する金融界にとって、働き方改革は新たなビジネスモデルに転換するチャンスともなろう。金融庁は2016年9月に営業時間の規制を緩和したのに続き、今夏には店舗の平日休業を解禁する。こうした規制緩和やRPA(ロボットによる業務自動化)、AI(人工知能)といったデジタル化の流れと並行し、仕事や賃金のあり方も含めた業務の見直しを進めていくことが望ましい。
働き方改革を契機に、長期的な視点で組織の活力をどう引き出すか。経営トップが強い意志を持って臨むことが必要だ。2018.7.13
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